2023.03.27
安全帯・フルハーネスの新規格「墜落制止用器具」の規格や使用制限は?安全衛生特別教育の受講が義務化に
既にご存じの方が多いと思いますが、2022年1月から安全帯が使用できなくなりました。現在は新規格の「墜落制止用器具」として、作業現場や内容に応じてフルハーネス型、もしくは胴ベルト型の2種のみが使用できます。
また改正案ではこれまで不要だった「安全衛生特別教育の講座」を受講・修了しなければ作業することができなくなったので、新規格の墜落制止用器具の規格と使用制限など変更箇所と併せてチェックしておきましょう。
今回は新規格の墜落制止用器具が旧規格の安全帯・フルハーネスとどう変わったのか、義務化となった安全衛生特別教育の内容や受講料、省略できる条件などについて詳しく解説していきます。
目次
2019年2月に労働安全衛生法の一部が改正されて、これまで「安全帯」と呼ばれていた製品について名称や規格が変更になりました。
これまでは安全帯でしたが、「墜落制止用器具」へと名称が変更されて、それに伴って旧規格品である安全帯と、新規格の墜落制止用器具では規格が大きく異なります。
法案が施行された2019年2月1日から2022年1月1日まで移行期間として旧規格品が使用できていましたが、すでに現在では旧製品の製造や販売が禁止されています。
旧規格 安全帯 | → | 新規格 墜落抑止用器具 |
胴ベルト型 (一本吊り) | 〇 | 胴ベルト型 (一本吊り) |
胴ベルト型 (U字吊り) | × | 使用出来ない |
ハーネス型 (一本吊り) | 〇 | ハーネス型 (一本吊り) |
また変更になったのは安全帯の名称や規格だけではなく、使用制限についても大きく変更になっています。
2022年1月2日以降は、6.75m以上の高さ(建設業は5m)で作業する場合に、必ず新規格のフルハーネス型を着用しなければならなくなりました。
これまでの旧規格品の安全帯のなかでも、特に胴ベルト型は使用するハードルが低く、動きやすく作業しやすいことがメリットで多くの作業現場で使用されてきました。しかし墜落時に衝撃がお腹に一点集中してしまうことから、万が一の際には危険なものだったので、2022年からは身体全体を複数箇所にわたって支える安全性が格段に向上しているのが特徴です。
上記の表のように、旧規格品の「胴ベルト(U字吊り)」は墜落を制止する機能がないことから、新規格では「胴ベルト(一本吊り)」、もしくは「ハーネス型(一本吊り)」のみが使用できます。原則として新規格ではフルハーネス型の使用が求められますが、状況によっては胴ベルトの使用も認められます。
旧規格品 | 新規格品 |
■商品名が「安全帯」 ■胴ベルト型(一本吊り・U字吊り)・ハーネス型の3種 ■使用制限がない ■使用可能質量が85kg ■ショックアブソーバーの伸びが650mm以下 |
■商品名が「墜落抑止用器具」 ■フルハーネス型もしくは胴ベルト型の2種類のみ ■使用制限 1. 6.75m以上の高所作業時はフルハーネスを着用しなければならない 2. 器具は着用者の体重および装備品の合計質量に耐えられること 3. ランヤードは作業箇所の高さおよび取り付け設備などの状況に応じて、適切なものでなければならない ■使用可能質量が100kgまたは80kg※特注品の場合はこの限りでない ■ショックアブソーバーの伸び 1. 第一種…自由落下距離1.8m、衝撃荷重値4.0kN以下:1.2m以下 2. 第二種…自由落下距離4.0m、衝撃荷重値6.0kN以下:1.75m以下 |
上記の表は、これまでの安全帯の旧規格品と、新規格品である墜落制止用器具の違いについてまとめています。ひと目見ただけで、新規格品には使用制限が増えているので、安全帯を使用して作業される方は必ず確認しておいてください。
前述したようにすでに旧規格の安全帯・フルハーネスは製造や販売が禁止されているので、購入することはできませんが、もしお手元に旧規格品と新規格品の両方があった場合は、どうやって見分ければいいのでしょうか?
ここからは、安全帯・フルハーネスの新・旧規格品の見分け方について、2つのポイントを解説していきます。
今回の法改正で最もわかりやすい変更点が、名称の変更です。
そのため製品本体やランヤード、ショックアブソーバなどのラベル表記を確認することで、旧製品か新製品かの確認ができます。
名称が「安全帯の規格」となっているものは、旧規格品で現在は使用できません。
一方で「墜落制止用器具」もしくは「墜落制止用器具の規格」と記載されているものが新規格品なので使用することができます。また製品パッケージそのものに「新規格品」と記載されていれば、現状使用できます。
新規格品では、旧規格品と比較してショックアブソーバの伸びが約2倍になっているにで、ショックアブソーバその物の大きさも大きくなっています。これによって作業落下時の衝撃が少なくなることで、安全性が高くなっています。
ショックアブソーバの大きさについてはあくまで判断基準のひとつなので、必ず併せて製品ラベルも確認するようにしましょう。
またショックアブソーバはフックの位置によって、第一種あるいは第二種のいずれかから適切な種別を選ぶ必要があります。腰より高い位置にフックをかけるときは第一種、腰より低い足下にかけるときは第二種を選ぶようにしましょう。
※一種であれば〇の部分のみ 二種の場合は〇も△の箇所もかけてよい
改正法施行後、「高さが2m以上かつ作業床を設けることが困難なところにおいて、フルハーネス作業安全帯を用いて行う労働(ロープ高所作業に係わる業務は除外)」に該当する労働者の方は、安全衛生特別教育(フルハーネス特別教育)の講習を受ける必要があります。
ここで言う「作業床」とは、「作業のために設けられている足場となる平面的な床」のことですが、何が作業床に該当するかは法的に明記されていないので、迷った際は所轄の労働基準監督署に相談しておくと安心です。
・建設鉄骨や鉄塔の組み立て、解体、変更作業
・柱上作業(電気、通信柱など)
・木造家屋など低層住宅における作業で以下の物
1.屋根面を作業床とみなされない急勾配(勾配6/10以上)または滑りやすい材料の屋根下地であって、屋根足場を設けることができない屋根上作業
2.梁(はり)、母屋、桁上、垂木上での作業
3.作業床を設けることができない一側足場(抱き足場)での作業
・足場の組み立て解体または変更作業で、つり棚足場の足場板の設置または撤去などの作業や、単管上に足を乗せて作業床の設置または撤去などの作業
・鉄筋コンクリート(RC)造解体作業において、梁上から鉄筋などを切断する作業
・スレート屋根上作業で踏み抜きによる墜落防止対策のために、歩み板を設置または撤去する作業
・送電線架線作業 など
【参照】
ご自身が従事する作業のすべてが安全衛生特別教育の対象になるケースもあれば、一部で受講が必要になるケースもあります。
上記の作業例は一部ですが、原則として「高さが2m以上で、作業床を設けることが困難な箇所」でフルハーネス型を使用する場合に受講が必要になります。ガイドラインでは、冒頭でお話ししたようにフルハーネス型は一般的な建設作業で5m以上、その他の作業では6.75m以上を超える作業において着用が必要です。
しかし高さが5m未満の作業床が設けられない作業場所においては、原則として同様にフルハーネス型の着用が求められますが、フルハーネス型の着用者が地面に到達する恐れがある場合は胴ベルト型を着用することができます。
このように作業現場や作業内容によってフルハーネス型か胴ベルト型か求められる墜落制止用器具の種類が異なるということも覚えておきましょう。
安全衛生特別教育の講習は、資格試験ではないので事前に勉強しておく必要はありません。
カリキュラムは作業に関する知識や、墜落制止用器具に関する知識などの座学の他に、器具の使用に関する実技で構成されています。
この安全衛生特別教育を受講して修了しておかなければ作業することができないので、必ず受講・修了しておく必要があります。
後述しますが、条件を見たすことで一部座学を省略することができますが、すべて受講した場合でも約6時間程度のボリュームなので、1日で受講・修了することができます。
区分 | 講習科目 | 講習時間 |
学科 | 作業に関する知識 | 1時間 |
墜落抑止用器具に関する知識 | 2時間 | |
労働災害の防止に関する知識 | 1時間 | |
関連法令 | 0.5時間 | |
実技 | 墜落抑止用器具の使用方法等 | 1.5時間 |
特別教育は学科が4.5時間、実技が1.5時間となっており、ちゃんと準備すればほとんどの人が通過することができる内容になっています。
安全衛生特別教育の講習を受ける方法は、建設業関連の一般社団法人や財団法人によって全国開催されているケースがほとんどですが、近くで開催されていない場合は、出張講習に対応している団体に依頼して受講することになります。
一般的には対応している団体のホームページに講習スケジュールが記載されているので、確認してから予約しましょう。その後、講習料の支払いをして、講習終了後に修了証が交付される流れが多いです。
また、団体によっては外国人対象のコースを開催していることもあるので、この際は同伴の通訳者は不要です。
受講料は省略できる科目数や開催している団体によって変動しますが、テキスト代を含めても約10,000円程度が目安です。会社員やアルバイトなどの方は会社側が指定した日時と場所で講習を受けることが多く、受講料も負担してくれるケースが多いです。事業主の方は、「建設労働者確保育成助成金「技能実習コース(経費助成)(賃金助成)」」という助成金を利用することができます。
対象となる建設事業主の条件については厚生労働省のホームページを事前に確認しておくようにしましょう。
助成金を受け取るためには、計画届や申請書類、関係書類一式を提出する必要があるので、余裕をもって計画を立てるようにしましょう。
条件 | ||||
区分 | 講習科目 | フルハーネス型を用いて行う作業に6か月以上従事した経験を有するもの | 胴ベルト型を用いて行う作業に6か月以上従事した経験を有するもの | ロープ高所作業特別教員受講者または足場の組み立てなど特別教育受講者 |
学科 | 作業に関する知識 | 省略可 | 省略可 | 受講必須 |
墜落抑止用器具に関する知識 | 省略可 | 受講必須 | 受講必須 | |
労働災害の防止に関する知識 | 受講必須 | 受講必須 | 省略可 | |
関連法令 | 受講必須 | 受講必須 | 受講必須 | |
実技 | 墜落抑止用器具の使用方法 | 省略可 | 受講必須 | 受講必須 |
基本的に以前から「2m以上の高所で作業床の設置が困難な場所、および墜落抑止用器具のうちフルハーネス型を着用しての作業」を行ってきた方の内、同じ条件かで6か月以上の従事経験があれば以下の3科目を省略することができます。
1.作業に関する知識
2.墜落抑止用器具に関する知識
3.墜落抑止用器具の使用方法など
しかし、フルハーネス型ではなく胴ベルト型の着用だった場合は、「作業に関する知識」のみが省略、足場の組み立てなど特別教育受講者や、ロープ高所作業特別教育受講者の場合は「労働災害の防止に関する知識」を省略することができます。
また、ご自身が「安全な床がある場所でのみ作業する場合」は、安全衛生特別教育の講習を受ける必要はありません。改正法の適用日は2019年2月1日ですが、それよりも前に改正省令の行う特別教育の科目を受講したことのある方は、同じ科目を受講する必要はありません。
ほとんどの受講科目がないという方も少なくないと思いますが、ご自身の受講科目や免除条件などについては事前によく確認しておきましょう。
2019年2月1日施行の改正案では、3年間の準備期間を経て、2022年1月からこれまでの安全帯が使用できなくなりました。
そのためお手持ちの旧規格品の安全帯や、新規格品の墜落制止用器具の両方をお持ちで、どっちが新規格品なのか判断がつかない方は、今回ご紹介したのポイントをチェックして判断してみましょう。
また、今回の改正法では「安全衛生特別教育(フルハーネス特別教育)」の講習を受講して修了しなければ、作業することができません。
そのため、「高さ2m以上で作業床を設けることが困難な箇所での作業」を行うすべての方は、安全衛生特別教育を受講・修了する必要があります。しかし「6か月以上フルハーネス型を用いて行う作業に従事した方」や、「ロープ高所作業特別教育受講者、または足場の組み立てなど特別教育受講者」は一部科目を省略することができます。
省略できる科目があるのか、それとも全ての科目を受講するのかによって受講料が変動するので、ご自身が省略できる科目があるのかについて事前に確認しておくようにしましょう。
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