2023.07.12
【非溶極・溶極式別】アーク溶接機の種類7種と溶接機の選び方のポイントを解説!
金属などの素材を溶かして接着する溶接機は、ほとんどのケースで「アーク溶接」を使用する溶接機を指します。しかし一言でアーク溶接と言っても、非溶極式と溶極式かによって種類がたくさんあります。
そこで今回は、アーク溶接の溶接機の種類7種と溶接機の選び方のポイントを詳しく解説していきます!
目次
一般的に溶接と言うと「アーク溶接」のことで、空間的に離れた2つの電極に電圧をかけて空気の絶縁を破壊することで、2つの電極の間に発生した電流と強い光、そして熱を利用することで溶接することができます。
アーク溶接は金属と空気の接触を断つことで上手に接合することができるので、窒素や酸素と金属の接触を防がなければなりません。この遮断にはシールドガスやフラックスがよく使われていて、アーク溶接そのものにも種類がたくさん存在しています。
アーク溶接機 | 非溶極式 | TIG溶接 |
プラズマ溶接 | ||
溶極式 | 被覆アーク溶接 | |
CO2/MAG溶接 | ||
MIG溶接 | ||
セルフシールドアーク溶接 | ||
サブマージアーク溶接 |
アーク溶接は上記の表のように「非溶極式(非消耗電極式)」と「溶極式(消耗電極式)」の2つの種類に分けることができます。
まず溶極式とは、電極自体が溶加材になっていて、溶融して消耗するタイプのことです。一方で非溶極式は、電極がほとんど消耗せずに「溶接材」と呼ばれる、溶接の際に加える点火材料を用意するタイプのことです。
ここからは、非溶極式と溶極式の溶接機の種類を、特徴やメリット・デメリットまで詳しく解説していきます!
TIG(ティグ)溶接機は非溶極式の溶接機で、シールドガスにアルゴンガス、もしくはヘリウムガスを使って、溶接棒は熱に強くて消耗しないタングステンを使います。
溶接部の金属を補うために別の溶接棒を使って溶接を行うのが特徴で、アルミニウムやステンレスにも接合することができるので、車のカスタムや配管の溶接に使用される溶接機の種類です。
溶融池を確認しながら作業することができるので、安定性に優れていて、溶接速度は比較的遅いのが特徴です。
溶融池 | 溶接の際にアーク熱その他などの熱によって電極や母材が溶融してできた溶融金属のたまりのこと |
TIG溶接機と同じく非溶極式の溶接機です。TIG溶接機と同様に溶接棒にタングステンを使って、熱源にはプラズマアークを利用します。
TIG溶接機との違いは、TIG溶接は電極から直接母材にアークを移行するのに対して、プラズマ溶接機はアークを水冷インサートチップの孔を通過させて母材に移行させます。プラズマアークはエネルギー密度が高く、5,000〜7,000℃以上の高温で溶融させることができるので、素材の変形が少ないというメリットがあります。
その他には、隅肉溶接に最適でスパッタが発生せずに、電極消耗が少ないので長時間作業することができます。一方で、設備費とランニングコストがかかる他に、溶接継手には精度が要求されるため、厳しい安全対策が求められるというデメリットがあります。
母材 | 溶接または切断される材料のこと |
スパッタ | 溶接中に飛散した金属粒のこと |
溶接継手 | 接合した母材と母材の接合面のこと |
隅肉溶接 | 鋼材をアーク溶接する際の方法の1つ。2つの面を溶接する場合において、開先(かいさき)を設けずに3角形状の断面を持つ溶接のこと |
開先 | 必要な溶け込みを得るために、溶接の前に溶接継手に設けられる溝状の窪みのこと |
溶極式の溶接機で、母材と同材質の金属棒と、フラックスという炭酸カルシウムや、セルロースなどの被覆材(フラックス)をかぶせた溶接棒を使います。
被覆アーク溶接機のメリットは、他の溶接機と比べて安価で風の影響を受けにくいという点です。そのため屋外作業に最適ですが、一方で使用する溶接棒は湿気を吸収してしまうと温度が安定しないといったデメリットがあります。
被覆材 (フラックス) |
被覆材のこと。溶接時に母材や溶加材の酸化物等を除去して溶融表面を保護し、金属同士をより接合しやすくする |
溶極式の溶接機で、CO2溶接機は炭酸ガスを使用する溶接機です。MAG溶接機はアルゴンガスやヘリウムガスなど不活化ガスと、炭酸ガスを混ぜた混合ガスをシールドガスとして使用する溶接機になります。
CO2溶接機は、風に弱いので屋内でしか使用できないというデメリットがあります。しかし炭酸ガスは不活化ガスと比べ安価に使用ができるというメリットもあります。
MAG溶接機は不活化ガスに炭酸ガスを混ぜることで、アークを補足することができるので、エネルギーを細かく集中させて溶け込みを深くさせることができます。
CO2溶接機、MAG溶接機に使用する電極は消耗する溶接ワイヤが自動供給されます。溶接棒は自動で供給されますが、溶接トーチは作業者が手動で動かすため、半自動溶接と呼ばれます。ともに炭酸ガスを使用していることからアルミニウムなどの非鉄金属への使用はできません。
シールドガス | 金属と空気(酸素や窒素)を遮断するためのガス。溶接中の金属の酸化や窒化などを防ぐ |
溶極式の溶接機で、シールドガスはTIG溶接と同様にアルゴンガスやヘリウムガスなど不活化ガスを使用します。
主にステンレスやアルミの溶接に適した溶接機の種類で、きれいな仕上がりになるのが特徴です。しかしアルゴンガスそのものが高価なので、高頻度で使用することができないというデメリットがあります。
MIG溶接機はアルミニウム合金やステンレス鋼、耐熱合金鋼などMAG溶接機などが使えない素材を溶接するときに使用されることが多いです。MIG溶接機もCO2/MAG溶接機と同じく半自動溶接機になります。
ガスを使用せず、半自動で溶接を行う溶接機です。シールドガスを使用せずに、フラックスを塗布した溶接ワイヤを使って、アーク発生とともにアーク熱に反応したフラックスからガスが発生することでアーク柱と溶解池の酸化を保護しながら溶接していきます。
セルフシールドアーク溶接は、いわば「半自動被覆アーク溶接機」なので、自動供給される溶接ワイヤを使います。被覆アーク溶接機と同じく屋外での使用に最適で、広範囲の母材へ溶接することができます。
溶接ワイヤ | アーク溶接に用いられるコイル状の溶接材料です。 アーク溶接の中でも自動溶接や半自動溶接に使われるもの |
事前に粉末状のフラックスを溶接線伏に散布しておいて、その中に溶接ワイヤを自動送給していき、溶接ワイヤと母材との間にアークを発生させて溶接していきます。太いワイヤと大電流を使用するので、スピーディーな溶接が可能です。
溶込みの深い溶接を行うことができる他に、スパッタやヒュームがあまり発生しないというメリットがあります。また仕上がりの品質が作業者の技量によって左右されないので、職人の熟練度を必要とせず、疲労を感じにくく長時間の作業が可能です。
一方では、溶接する姿勢が限定される他に、溶接中にアーク状態を直接目視で確認できず、良否を確かめながら溶接できないというデメリットがあります。
ヒューム | 溶接の際に溶けた金属が蒸気に変わり、その後冷やされてとても小さな金属の粒子に変化したもの |
ここまで解説してきた溶接機は、建設現場だけではなく飛行機や自動車、鉄道車両など幅広いシーンで活躍しています。溶接機はピンポイントで加熱することができるので、小さな部品の溶接も得意です。
あらゆる現場で溶接機は活躍するので、さまざまなメーカーがいろいろな種類の溶接機を販売していますが、「何を基準に選んだらいいのかわからない」とおもわれる方も多いです。
ここからは、溶接機の選び方として3つのポイントを解説していきます!
溶接機は金属を溶かす機械のことですが、溶かしたい金属によって選ぶ溶接機が異なります。
被覆アーク溶接機の場合、「直流インバータ溶接機」「交流アーク溶接機」「ノンガス半自動溶接機」の3種類に分かれているので、それぞれの種類のメリットとデメリットを把握しておくことが大切です。
まず直流インバータ溶接機は、安定性に優れていてコンパクト設計なので持ち運びに便利です。通常の被覆アーク溶接機は交流ですが、交流から直流へ構造を変換することができるのでアークに安定性があります。しかしデメリットとして、交流から直流に構造を変換するためメンテナンスが複雑というデメリットがある他に、一般的な交流アーク溶接機と比べてコストがかかります。
次に交流アーク溶接機は、「溶接機と言ったらコレ!」と言われるほど、コスパに優れていて、シンプルな構造をしています。構造がシンプルなのでメンテナンス性に優れていますが、アークが不安定なので作業に影響が出ることがあります。
最後にノンガス半自動溶接機は、ガスを使用せずにスイッチひとつで自動的に溶接ガンから部材が出るので、作業効率がとても良いというメリットがあります。しかしデメリットとして、溶接時に煙りが出やすく、溶接したところに金属粒が多く出ることがあります。
このように被覆アーク溶接機と一言で言っても、種類ごとに特徴やメリット・デメリットが異なるので、それぞれの特徴をよく理解しておきましょう。
溶接機には定格入力というものがあって、電圧×電流で計算することができます。このときに計算した定格入力が、契約しているアンペアを超えないようにする必要があるので注意が必要です。
例えば、定格入力が4KVAと表示されていたとしたら、「K」が1,000キロなので、4×1,000=4,000VAと計算することができます。アンペアを求めるときは、先ほど求めたVA÷電圧で計算します。日本では100Vが一般的な家庭で使用される電圧なので、4,000VA÷100V=40Aということになります。
4KVAの溶接機を使用するためには40アンペアが必要ということが分かります。通常の家庭であれば最大35Aまでで契約しているケースが多いので、40Aの溶接機は使用できないということになります。
ほとんどのモデルでは定格入力はアンペア(A)で表記されていることが多いですが、もし「KVA」と表記されていたら、ご紹介した計算方法で計算してみましょう。
定格入力の次は、定格使用率を確認しましょう。定格使用率とは、10分間のうちに何分間溶接することができるのかを示した数値のことで、ほとんどのケースで「%」で表記されています。
例えば定格使用率40%であれば、4分間溶接することができて、6分間溶接機を休ませる必要があるということになります。定格使用率で定められた時間を超えて溶接してしまうと、オーバーヒートの原因になってしまうので注意が必要です。
DIY向けの溶接機であれば、定格使用率が小さく設定されていて、溶接機のモデルによっては定格使用率を超えて使用し続けた場合に自動で電源が落ちるように設計されているものもあります。
溶接機は国内外のメーカーから販売されているので、購入する時はすごく悩んでしまうと思います。溶接機によって特徴や機能などがさまざまなので、信頼できるメーカーの人気モデルを知っておくことで選びやすくなります。
ここからは溶接機を販売するおすすめメーカー3社と、その人気モデルについてご紹介いたします!
イクラ(IKURA)は、平成19年7月に設立した工事用機器や建設、電設や溶接関連の製造・販売を行う会社です。溶接機や溶接関連機器、建設や電線などメンテナンス設備に関する製品ラインナップが多く、イクラの「溶接名人」シリーズは有名です。
産業用インバータ制御が搭載されたIS-LY160Dや、同じく産業用インバータ制御付きでかつ、100Vで安全に作業できる溶接機IS-LY100Vなどがあります。
・IS-LY160D
参照:
販売ページは↓をタップ♪
・IS-LY100V
参照:
販売ページは↓をタップ♪
溶接機や発電機のトップメーカーとして有名なデンヨーは、1948年に設立した会社で、溶接機やエンジン発電機などを製造・販売しています。
デンヨーのGAW-155ESは、耐久性の高いオールスチールボディながらも、重量87kgの軽量モデルです。無段階eモードとの組み合わせで燃料コスト削減が可能で、自動アイドリングストップ機能が標準装備になります。
さらにGAW-135は、溶接電流範囲が40、60、80、100、115、135の6段階に切り替えることができるのが特徴です。デンヨーは現場の声を反映させた実用的な溶接機を数多く製造・販売しています。
・GAW-155ES
参照:
販売ページは↓をタップ♪
・GAW-135
参照:
販売ページは↓をタップ♪
1981年2月に設立した日動工業は、設計開発機器を取り扱っている会社です。設計開発機器だけではなく、光学特性測定暗室や照明計、低電圧、雷サージ試験機、振動試験機など幅広いラインナップで世間からの信頼が厚く、評価も非常に高い会社です。
軽量かつパワフルなBM12-1020DAは使用率が50%と高く、連続的に溶接できるので職人さんに愛用されている溶接機です。
・BM12-1020DA
参照:
販売ページは↓をタップ♪
溶接機の選び方や、溶接機のおすすめメーカー・人気モデルがわかりましたが、「そもそもどこで溶接機を購入すればいいんだろう?」と感じた方が多いのではないでしょうか?
溶接機が買えるところは大きく分けて3つあります。ここからは3つの購入先と、購入するメリット・デメリットについて解説していきます。
ホームセンターや直営店で溶接機を購入する方法もありますが、ほとんどの方が手軽にいつでも購入できるインターネット通販を利用しています。
例えば、Amazonや楽天市場だけではなく、工具専門のインターネットショップがあります。インターネット通販で購入するメリットは、購入者の口コミを確認しながらじっくりと比較することができて、数日程度待てば自宅や会社まで溶接機を届けてくれることです。
しかし配送までに日数が必要になってくるので、急いでいるときには向いておらず、サイトによって価格に幅があるので慎重に購入しなければならないというデメリットがあります。また、口コミやレビューが「サクラ」によるニセモノということも多いので注意が必要です。
「溶接作業が必要になったけど、常に必要なわけじゃない」という方は、レンタルサービスを利用して一時的に溶接機を借りることができます。
コメリや鈴木機工株式会社が溶接機のレンタルサービスを実施していて、レンタルサービスを利用することでメンテナンスが行き届いた溶接機を使えるというメリットがあります。
「安くて人気の溶接機を購入したい」という方は、中古工具販売店で購入するのがおすすめです。
工具の買取専門店なら、インパクトドライバなど電動工具や電線、溶接機も扱っているので、ひとつのお店で必要なものを全て購入することができます。また溶接機選びに悩んだら、工具の知識に長けたスタッフに相談しながら選べる他に、購入後も修理サポートに対応している店舗もあります。
溶接機は、主にアーク溶接機のことで非溶極式と溶極式の2種類に分けることができます。その種類は幅広く、また溶接機ごとに特徴やメリット・デメリットが異なります。
溶接機の選び方では、溶かす金属の素材や定格入力、定格使用率の3つを確認しながら選ぶようにしましょう。
溶接機はさまざまなメーカーから、いろいろなモデルが販売されているので、購入を悩まれる方が多いと思います。悩まれている方は購入前にレンタルで先にお試しされるのもひとつだとおもいます。
実際にネットや専門店で購入される際に悩まれた場合は今回ご紹介した3つのメーカーはおすすめですのでぜひ参考にしてみてください。
工具を少しでも高く売るなら工具買取専門店Reツールにお任せください。新品工具・中古工具を高価買取!電動工具・エア工具・大工道具・油圧工具などお買取り致します!
・電動工具メーカーの世界シェア率を調査!世界ランキングベスト8とは?業界の今後は?
・HiKOKI(ハイコーキ)冷凍、冷蔵、保温が同時にできる36Lの大容量モデルUL18DEと10.5LのコンパクトモデルUL18DDの「コードレス冷温庫」とは?
・【これで丸わかり】シャーレンチは何に使うの?種類や使い方おすすめモデルまで徹底解説
接着・結合に関係する人気記事はこちら↓
工具買取専門店リツールのイメージキャラクター『リブルくん』
工具の最新情報や各工具の違いなどお役立ち情報を発信していきます!
中古工具の買取は工具買取専門店リツールまで♪